【連載】クラゲ学入門

第1回 クラゲの分類

豊川 雅哉独立行政法人 水産総合研究センター
西海区水産研究所 資源海洋部 海洋環境グループ
主任研究員 博士(農学生命科学)

これから何回かにわけてクラゲの生物学を紹介します。
ここは食用クラゲのことを紹介するサイトなので、食用クラゲのことを中心に書きます。
まずは、クラゲの分類の事を書きます。

クラゲとクシクラゲ

クラゲには、大きく分けて2つ種類があります。一つは刺胞動物門のクラゲで(図1a)、もう一つは有櫛動物門のクシクラゲです(図1b)。

刺胞動物は、刺胞という毒針を備えた器官をたくさん持っていて、刺します。サンゴやイソギンチャクも同じ仲間です。有櫛動物は刺胞を持たないので、刺しません。体の表面に8列に並んだ櫛状の小さな板(櫛板)があり、櫛板をパタパタさせて泳ぎます。クラゲとクシクラゲは全然違う生き物なのです。食用クラゲは、刺胞動物のクラゲの仲間です。
刺胞動物のクラゲの仲間の大部分は、ヒドロクラゲ、立方クラゲ、アサガオクラゲ、鉢クラゲの4つに大きく分かれます。この4つの違いを説明する前に、まず、ポリプというものを説明しなくてはなりません。

刺胞動物のクラゲ 有櫛動物のクシクラゲ
図1a. 刺胞動物のクラゲ 図1b. 有櫛動物のクシクラゲ

刺胞動物のクラゲとポリプ

ポリプとは、小さなイソギンチャクのような形をしたもので、口と胃(胃腔)と、口を囲む触手から成る単純な形をしています(図2a)。ポリプは海中の石や貝殻にくっついて生きています。大部分の種類では、クラゲに雌雄があり、卵と精子を出します。受精卵はポリプになり、クラゲはポリプから生まれて来ます。しかし、受精卵がポリプにならずクラゲになる種類や、クラゲからクラゲの芽が生えて来る種類もあります。

ヒドロクラゲ類の多くの種類では、岩などの上にヒドロ根を張り巡らし、そこからヒドロ茎が立ち上がって、茎の先にヒドロ花がつきます(図2b)。クラゲはヒドロ花以外のところにクラゲ芽として芽を出し、成長してクラゲの形になったら、そこから離れて泳ぎ出します。鉢クラゲや立方クラゲでは、ポリプは一つ一つ独立し、同じ形をしています(図2c)。そして、条件が整えば、ポリプの一つ一つがクラゲに姿を変えます。

次回はヒドロクラゲ、立方クラゲ、アサガオクラゲ、鉢クラゲの4つの違いをもう少し詳しく説明します。

鉢クラゲのポリプの模式図。触手は多くの場合4の倍数の本数ある。 ヒドロクラゲの一種のポリプ ミズクラゲ(鉢クラゲ類)のポリプ
図2a. 鉢クラゲのポリプの模式図。
触手は多くの場合4の倍数の本数ある。
図2b. ヒドロクラゲの一種のポリプ 図2c. ミズクラゲ(鉢クラゲ類)のポリプ